官能的で独創的な、魅力あふれるタヒチアンダンス。タヒチの島々にいるからこそ味わえる、心に残る壮大なパフォーマンスです。タヒチアンダンスは動きと音楽だけでなく、ダンサーがまとう美しい衣装でも表現される踊りで、衣装の製作は、それ自体が芸術の域に達しているといえるでしょう。

舞踊は時代を超えて受け継がれてきたタヒチの文化。「オリ・タヒチ」として知られ、動きと優美さを備えた芸術表現であり、物語を伝える方法でもあります。観光産業が活発になりタヒチ文化が世界に広まったことで、タヒチアンダンスの人気は高まっていきました。しかし、タヒチアンダンスはフランス領ポリネシアで長きにわたって禁止されていたのです。キリスト教の宣教師たちが、音楽や衣装、何よりもその挑発的な動きやジェスチャーを、あまりにも官能的で、刺激が強く、派手すぎると考えたためです。それでも、タヒチアンダンスは世代を超えて受け継がれ、その結果、オリ・タヒチは真のタヒチ文化の象徴としての地位を取り戻すことに成功しました。今日では、タヒチの島々の至るところでダンスショーを鑑賞することができ、夜公演を開催しているホテルもたくさんあります。また、多くの島では、この官能的な動きを習うためのダンスレッスンに参加できます。

タヒチアンダンスの衣装の歴史

踊り手が身に着ける衣装は、伝統的なタヒチアンダンスショーにおいて重要な役割を担っています。衣装は踊りが伝える物語と関連しているため、観客はショーのテーマを理解しやすくなるのです。19世紀初頭、タヒチの島々に来航したキリスト教宣教師たちが踊ることを禁止したため、1820年から130年間、タヒチアンダンスは完全に禁じられていました。1950年代、タヒチの王族の子孫であるマドレーヌ・モウアが行動を起こし、この伝統は復活を遂げます。その後、彼女の教え子の一人、ジル・オランドによって復興運動は継続されました。タヒチの文化的な年中行事のなかで、最も重要なのがヘイバ・イ・タヒチです。1か月にわたる伝統音楽と舞踊の祭典で、1956年にマドレーヌ・モウアが最初に結成したダンスグループの名前が付けられています。

伝統に倣い、ダンサーの衣装と髪飾りは植物繊維、花、貝殻、羽で作られ、胸元は半分にカットしたココナツの殻で作ったブラ、もしくはピピチオ(光沢のある小さな赤い種子)とタパ(樹皮布)を使用します。マルケサスのダンサーは、植物繊維で作ったスカートやタパを使用した衣装を身にまとい、首飾りや冠、腕輪は自分たちのルーツを表しています。タヒチアンダンスの衣装は、フランス領ポリネシアの緑豊かな自然環境に対する敬意の表れです。有名なダンスの祭典「ヘイバ・イ・タヒチ」で開催されるフラ・タウ(プロフェッショナル)と フラ・アバ・タウ(アマチュア)のダンスコンテストはオリ・タヒチを復活させた先見の明を持つ2人と、1世紀以上にわたって影に隠れなければならなかった華麗な衣装を称えています。フラ・タウのコンテスト勝者には「マドレーヌ・モウア」賞が、フラ・アバ・タウの勝者には「ジル・オランド」賞が授与されます。

踊り手と衣装

タヒチアンダンスには大きく分けて、オテア、アパリマ、ヒビナウパオアの4つのスタイルがあります。オテアは最も伝統的で、最も人気があるといわれています。以前は男性のみによる踊りでしたが、現在は誰でも踊ることができます。激しい腰の動きとゆっくりと優雅な腕のジェスチャーが特徴で、タヒチアンドラムのすばやく軽快なビートに合わせて踊ります。オテアの衣装は、プラウ(ハイビスカスの一種)の樹皮から作られるモレ(樹皮繊維のスカート)を着用します。樹皮は海水に数日間浸けて柔らかくしてから、外皮を剥ぎ取り内側の繊維を叩いて薄くします。細いひも状になった繊維を乾かし、プラウでできたベルトに取り付け、それをウエスト部分に巻きつけます。そのままの繊維の色はアイボリーで、染色することもあります。一部の踊りでは、ヘイ・ウポオと呼ばれる花飾りを頭につけたり、タパ(樹皮布)や葉っぱを身にまといます。

アパリマも伝統的なスタイルの踊りで、大人数で踊ります。オテアよりも動きはゆっくりとしていて、より官能的。女性はパレウをスカートのように腰に巻き、胸元はパレウと同じ素材を身に着けます。この踊りは、男の子と女の子が出会って恋に落ち、ずっと幸せに暮らしていくという物語を描いています。

ヒビナウはモダンなスタイルの踊りで、儀式やお祝いの席で最後に披露されることが多いです。アパリマオテアよりも自由度の高いヒビナウは、群舞のダンサーたちが作る円の中心で、主役のダンサーが即興のダンスを披露します。ダンサーたちは主役の動きに合わせたり、反対方向まわったりしながら踊ります。この踊りは、タヒチアンダンスのなかで一番簡単だといわれ、踊りのテーマは海に関連するものが多いです。伝統的なタヒチアンダンスの衣装であるモレを着用します。

パオアはヒビナウと一緒に披露されることが多い踊りです。ダンサーたちが円になって座り、太ももを叩きながら手や腕をすばやく動かし、その円の中心でカップルが踊りを披露します。狩りや釣りに関連する物語を伝え、伝統的なタヒチアンダンスの衣装のモレを着用します。

Group of dancers© Dimitri Nguyen Verdenet
Group of dancers© Dimitri Nguyen Verdenet

マルケサス諸島のダンサーたちは、2つの渓谷間の対立で敵を威嚇するために利用した戦いの踊り、ハカも披露します。ハカでは黒いパレウと豚の骨の首飾りを身に着け、短冊状のアウチと呼ばれる葉を上腕とふくらはぎに巻きつけます。この踊りは、怒りや威嚇を表す、響き渡るような深い息づかいが特徴です。

あまり知られていませんが、ほかの島々にも同じように昔から伝わる踊りが存在します。その一つがガンビエ諸島のペイです。ペイは足踏みするという意味で、ダンサーたちはモレのスカートを腰に巻き、同じ長さのモレのケープを首に巻きます。腕を伸ばして細かく振動させて魂を鎮め、敗れた悪霊を足で踏みつけます。

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